Galera MariaDB マルチマスターレプリケーションとは? 高可用性とスケーラビリティを実現する技術
Galera MariaDB マルチマスターレプリケーションは、MariaDBデータベースの高可用性とスケーラビリティを向上させるための技術です。従来のマスタースレーブ型レプリケーションとは異なり、複数のノードが読み取りと書き込みの両方の操作を同時に実行できる同期マルチマスター方式を採用しています。これにより、データベースへの読み込み/書き込みワークロードを分散させ、システム全体の処理能力と冗長性を向上させることができます。
Galera レプリケーションの仕組み
Galera レプリケーションは、Write Set Replication (WSREP) と呼ばれるレプリケーションエンジンを使用して、複数のノード間でデータを同期します。WSREP は、各ノードで実行されたトランザクションの書き込みセットを複製することで、データの一貫性を保ちます。
Galera クラスタには、以下のコンポーネントが含まれます。
- ノード: データを格納し、アプリケーションからのリクエストを処理するサーバー
- ギャップスロッター: トランザクションの順序を維持するコンポーネント
- コミット クォーラム: トランザクションをコミットする前に必要なノードの最小数
Galera マルチマスターレプリケーションの利点
- 高可用性: 1つのノードが故障しても、他のノードが引き続きデータの読み取りと書き込みを処理できるため、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。
- スケーラビリティ: ワークロードの増加に応じて、クラスタに新しいノードを追加することで、処理能力を拡張することができます。
- 読み取りパフォーマンスの向上: 読み込みリクエストを複数のノードに分散させることで、読み取りパフォーマンスを向上させることができます。
- ミッションクリティカルなアプリケーション: データベースの可用性が極めて重要なアプリケーションに適しています。
- Web スケーラブルなアプリケーション: 大量の読み取り/書き込みワークロードを処理する Web アプリケーションに適しています。
- 分散型アプリケーション: データを複数の拠点に分散させる必要があるアプリケーションに適しています。
- 複雑性: 従来のマスタースレーブ型レプリケーションよりも複雑な構成と管理が必要です。
- パフォーマンス: 同期レプリケーション方式であるため、マスタースレーブ型レプリケーションよりもパフォーマンスが劣る場合があります。
- データ競合: 複数のノードが同時にデータを書き込む場合、データ競合が発生する可能性があります。
Galera マルチマスターレプリケーションのセットアップには、いくつかの手順が必要です。
- 各ノードに MariaDB をインストールします。
- 各ノードの Galera 設定ファイルを構成します。
- Galera クラスタを初期化します。
- アプリケーションを Galera クラスタに接続します。
Galera MariaDB マルチマスターレプリケーションは、高可用性とスケーラビリティを必要とするミッションクリティカルなアプリケーションや Web スケーラブルなアプリケーションに適した高機能なレプリケーションソリューションです。ただし、複雑性やパフォーマンス上の制約事項があることに注意する必要があります。
補足
- Galera マルチマスターレプリケーションは、MySQL とも互換性があります。
- Galera Cluster は、商用版とオープンソース版の両方で利用できます。
Galera MariaDB マルチマスターレプリケーション:サンプルコード
前提条件
- 各ノードに SSH アクセスできる
手順
sudo nano /etc/my.cnf
以下の設定を追加します。
[galera]
wsrep_node_name = "node1"
wsrep_cluster_name = "mycluster"
wsrep_ca_path = "/etc/mysql/galera/ca"
wsrep_cluster_address = "gcluster0:45044,gcluster1:45044,gcluster2:45044"
wsrep_sst_receive_address = "gcluster0:3306,gcluster1:3306,gcluster2:3306"
wsrep_sst_donor_address = "gcluster0:3306,gcluster1:3306,gcluster2:3306"
wsrep_slave_permitted = ON
注:
wsrep_node_name
は、各ノードの一意な名前を設定します。wsrep_ca_path
は、認証局ファイルのパスを設定します。wsrep_cluster_address
は、クラスタ内のすべてのノードのアドレスをカンマ区切りで指定します。wsrep_sst_receive_address
は、ステートメントストレージトランスポート (SST) を受信するアドレスをカンマ区切りで指定します。wsrep_slave_permitted
は、すべてのノードが読み取りと書き込みの両方の操作を実行できるように設定します。
sudo service mysql start
sudo galera-init --cluster-name=mycluster --rs-nodes="gcluster0:45044,gcluster1:45044,gcluster2:45044" --force
アプリケーションで、以下の接続文字列を使用します。
server=gcluster0:3306,gcluster1:3306,gcluster2:3306;failover=yes;
failover
は、接続が失われた場合に別のノードにフェイルオーバーするように設定します。
Galera MariaDB マルチマスターレプリケーション:代替方法
MySQL Clusterは、MySQL用のオープンソースのマルチマスターレピケーションソリューションです。Galeraと同様に、同期レプリケーション方式を採用しており、高い可用性とスケーラビリティを実現できます。
Galeraとの比較:
- MySQL Clusterは、Galeraよりも歴史が長く、成熟したソリューションです。
- Galeraよりも多くの機能とオプションを提供しています。
- Galeraよりも複雑な構成と管理が必要です。
Multi-Master Replication with ProxySQL
ProxySQLは、MySQL用のプロキシサーバーであり、マルチマスターレプリケーションを含む様々な機能を提供します。非同期レプリケーション方式を採用しており、Galeraよりも高いパフォーマンスを実現できます。
- ProxySQLは、Galeraよりも軽量で、リソースが少ない環境に適しています。
- データの一貫性を保証するために、追加の構成が必要となります。
マスターマスターレプリケーションと共有ストレージを組み合わせる方法もあります。この方法は、比較的シンプルですが、データの一貫性を保証するために、アプリケーション側でロジックを実装する必要があります。
- 共有ストレージを使用する方法は、Galeraよりもシンプルで安価です。
- Galeraよりも高いパフォーマンスを実現できます。
- データの一貫性を保証するために、アプリケーション側でロジックを実装する必要があります。
- 複雑なアプリケーションには適していない可能性があります。
最適な方法は、要件によって異なります。以下の点を考慮して選択してください。
- 可用性: 高可用性を必要とする場合は、Galera、MySQL Cluster、または共有ストレージを使用するマスターマスターレプリケーションが適しています。
- スケーラビリティ: ワークロードの増加に応じてスケーラビリティを必要とする場合は、Galera、MySQL Cluster、またはProxySQLが適しています。
上記以外にも、MariaDBのマルチマスターレプリケーションを実現する方法があります。新しいソリューションが開発される可能性もありますので、最新の情報に常に注意してください。
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