SQLite で制約違反時にエラーを発生させる方法:ON CONFLICT 句と代替方法
SQLite の ON CONFLICT
句:列定義での動作
列定義での ON CONFLICT
句の構文は以下の通りです。
列名 [DATATYPE] [CONSTRAINT] [ON CONFLICT [CLAUSE]]
例:
CREATE TABLE users (
id INTEGER PRIMARY KEY,
username TEXT UNIQUE ON CONFLICT IGNORE,
email TEXT UNIQUE ON CONFLICT REPLACE
);
この例では、username
列と email
列にそれぞれ UNIQUE
制約を定義し、ON CONFLICT
句を使用して制約違反時の動作を指定しています。
email
列:username
列:
ON CONFLICT
句で使用できるオプションは以下の通りです。
- ABORT: エラーを発生させて処理を中止し、既存の変更を破棄します。
- FAIL: エラーを発生させて処理を中止します。
- ROLLBACK: トランザクション全体をロールバックします。
- REPLACE: 既存の値を新しい値で置き換えます。
- IGNORE: 制約違反を無視し、挿入または更新を続行します。
列定義での ON CONFLICT
句の使用例
制約違反時にエラーを発生させる場合:
CREATE TABLE orders ( id INTEGER PRIMARY KEY, customer_id INTEGER REFERENCES customers(id) ON CONFLICT FAIL );
既存のデータを更新する場合:
CREATE TABLE customers ( id INTEGER PRIMARY KEY, email TEXT UNIQUE ON CONFLICT REPLACE );
注意事項
- 複数の
ON CONFLICT
句を同じ列に定義することはできません。 ON CONFLICT
句は、列定義でのみ使用できます。ステートメントレベルでの使用はできません。ON CONFLICT
句は、INSERT または UPDATE 操作でのみ使用できます。
CREATE TABLE products (
id INTEGER PRIMARY KEY AUTOINCREMENT,
name TEXT UNIQUE ON CONFLICT IGNORE,
price REAL
);
コードの説明:
price REAL
:price
列を浮動小数点型として定義し、製品の価格を格納します。name TEXT UNIQUE ON CONFLICT IGNORE
:name
列をテキスト型として定義し、重複を許可しないようにUNIQUE
制約を設定します。ON CONFLICT IGNORE
句を使用することで、同じ名前の製品を挿入しようとすると、挿入を無視するようにします。id INTEGER PRIMARY KEY AUTOINCREMENT
:id
列を主キーとして定義し、自動的にインクリメントされる整数値を格納します。CREATE TABLE products
: 新しいテーブルproducts
を作成します。
例:
INSERT INTO products (name, price) VALUES ('T-shirt', 19.99);
INSERT INTO products (name, price) VALUES ('T-shirt', 15.99);
このコードを実行すると、最初の INSERT
ステートメントは成功しますが、2番目の INSERT
ステートメントは無視されます。products
テーブルには、id
1 の T-shirt
製品のみが記録されます。
既存のデータを更新する
この例では、customers
テーブルに email
列と phone_number
列を定義し、email
列に UNIQUE
制約を設定します。ON CONFLICT REPLACE
句を使用することで、同じメールアドレスを持つ顧客が存在する場合、既存の顧客情報を新しい情報で置き換えするようにします。
CREATE TABLE customers (
id INTEGER PRIMARY KEY AUTOINCREMENT,
email TEXT UNIQUE ON CONFLICT REPLACE,
phone_number TEXT
);
phone_number TEXT
:phone_number
列をテキスト型として定義し、顧客の電話番号を格納します。email TEXT UNIQUE ON CONFLICT REPLACE
:email
列をテキスト型として定義し、重複を許可しないようにUNIQUE
制約を設定します。ON CONFLICT REPLACE
句を使用することで、同じメールアドレスを持つ顧客が存在する場合、既存の顧客情報を新しい情報で置き換えするようにします。CREATE TABLE customers
: 新しいテーブルcustomers
を作成します。
INSERT INTO customers (email, phone_number) VALUES ('[email protected]', '555-1212');
INSERT INTO customers (email, phone_number) VALUES ('[email protected]', '777-3333');
このコードを実行すると、最初の INSERT
ステートメントは成功しますが、2番目の INSERT
ステートメントは既存の email
アドレスを持つ顧客情報を新しい情報で置き換えます。customers
テーブルには、id
1 の [email protected]
顧客のみが記録され、電話番号は 777-3333
に更新されます。
制約違反時にエラーを発生させる
この例では、orders
テーブルに customer_id
列を定義し、customers
テーブルの id
列を参照する外部キー制約を設定します。ON CONFLICT FAIL
句を使用することで、無効な顧客 ID を持つ注文を挿入しようとすると、エラーを発生させます。
CREATE TABLE orders (
id INTEGER PRIMARY KEY AUTOINCREMENT,
customer_id INTEGER REFERENCES customers(id) ON CONFLICT FAIL
);
customer_id INTEGER REFERENCES customers(id) ON CONFLICT FAIL
:customer_id
列を整数型として定義し、customers
テーブルのid
列を参照する外部キー制約を設定
SQLite における ON CONFLICT
句の代替方法
EXCEPT clause を使用する
EXCEPT
clause は、2つのクエリ結果の差集合を返すクエリ演算子です。この機能を活用することで、重複するレコードを挿入しようとした場合に、既存のレコードのみを取得することができます。
INSERT INTO products (name, price)
SELECT name, price
FROM new_products
EXCEPT
SELECT name, price
FROM products;
WHERE
: 上記2つのクエリ結果の差集合を取得します。EXCEPT SELECT name, price FROM products
:products
テーブルからname
とprice
列の値を選択します。INSERT INTO products (name, price)
:products
テーブルに新しいレコードを挿入します。
INSERT ... OR IGNORE を使用する
INSERT ... OR IGNORE
ステートメントは、制約違反が発生した場合にエラーを発生させずに処理を続行します。このステートメントは、ON CONFLICT IGNORE
句と同様の効果を持つため、古いバージョンの SQLite を使用している場合に代替手段として使用できます。
INSERT OR IGNORE INTO products (name, price) VALUES ('T-shirt', 19.99);
INSERT OR REPLACE INTO customers (email, phone_number) VALUES ('[email protected]', '777-3333');
それぞれの方法の比較
方法 | 説明 | 利点 | 欠点 |
---|---|---|---|
ON CONFLICT 句 | 列定義で制約違反の処理を指定 | わかりやすい、柔軟性が高い | SQLite 3.8.2 以降でのみ使用可能 |
EXCEPT clause | 重複レコードの挿入を回避 | シンプル | 複雑なクエリになるとわかりにくい |
INSERT ... OR IGNORE | 制約違反を無視して処理を続行 | 古いバージョンの SQLite で使用可能 | エラー処理が困難 |
INSERT ... OR REPLACE | 制約違反が発生した場合に既存の値を置き換え | 古いバージョンの SQLite で使用可能 | 既存のデータが意図せず書き換えられる可能性がある |
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