SQL Serverにおけるエラー処理のベストプラクティス:RAISERROR()の使い方から応用例まで
SQL Server における RAISERROR() の構文と意味
構文
RAISERROR(
msg_id, /* エラー メッセージ ID またはメッセージ文字列 */
severity, /* エラーの重大度 (11 ~ 25) */
state, /* エラー状態 (0 ~ 255) */
[message text], /* エラー メッセージ テキスト (省略可能) */
[argument1], /* エラー メッセージ置換パラメーター (最大 21) */
...
);
パラメーター
msg_id
: エラー メッセージ ID またはメッセージ文字列。メッセージ ID を指定する場合は、sys.messages
カタログ ビューに定義されている必要があります。メッセージ文字列を指定する場合は、引用符で囲む必要があります。severity
: エラーの重大度。11 ~ 25 の値を指定できます。値が 11 ~ 16 の場合は、エラーが報告されますが、トランザクションは続行されます。値が 17 ~ 20 の場合は、エラーが報告され、トランザクションがロールバックされます。値が 21 ~ 25 の場合は、エラーが報告され、トランザクションがロールバックされ、セッションが終了します。state
: エラー状態。0 ~ 255 の値を指定できます。このパラメーターは、通常使用されません。message text
: エラー メッセージ テキスト (省略可能)。メッセージ ID を指定する場合にのみ使用できます。メッセージ テキストには、置換パラメーターを含めることができます。argument1
: エラー メッセージ置換パラメーター (最大 21)。置換パラメーターは、@
記号で指定します。
例
-- エラー メッセージ ID 5000 を使用してエラーを報告する
RAISERROR(5000, 16, 1, 'データベース接続に失敗しました。');
-- メッセージ文字列を使用してエラーを報告する
RAISERROR('無効なユーザー ID またはパスワードです。', 18, 1);
-- 置換パラメーターを使用してエラー メッセージを生成する
RAISERROR(5001, 16, 1, 'テーブル "%s" は存在しません。', @TableName);
RAISERROR() と THROW の違い
RAISERROR() と THROW は、どちらも Transact-SQL でエラーを処理するために使用されるステートメントですが、いくつかの重要な違いがあります。
- エラー処理: RAISERROR() は、エラー メッセージを生成し、セッションのエラー処理を開始します。一方、THROW は、エラー メッセージを生成せずに例外をスローします。
- トランザクションのロールバック: RAISERROR() は、
severity
パラメーターの値に応じて、トランザクションをロールバックするかどうかを決定します。一方、THROW は、常にトランザクションをロールバックします。 - CATCH ブロック: RAISERROR() で生成されたエラーは、CATCH ブロックで処理できます。一方、THROW でスローされた例外は、CATCH ブロックで処理できるとは限りません。
この例では、RAISERROR()
ステートメントを使用して、エラー メッセージ ID 5000 を使用してエラーを報告します。
CREATE PROCEDURE sp_CreateUser
(
@UserName nvarchar(50),
@Password nvarchar(50)
)
AS
BEGIN
DECLARE @UserId int;
-- ユーザーを作成する
INSERT INTO Users (UserName, Password)
VALUES (@UserName, @Password);
-- ユーザー ID を取得する
SELECT @UserId = SCOPE_IDENTITY();
-- ユーザー ID が 0 の場合は、エラーを報告する
IF @UserId = 0
BEGIN
RAISERROR(5000, 16, 1, 'ユーザーの作成に失敗しました。');
RETURN;
END
-- 成功メッセージを返す
RAISERROR('ユーザー "%s" が作成されました。', 11, 1, @UserName);
END;
このコードを実行すると、次の出力が生成されます。
ユーザー "John Doe" が作成されました。
CREATE PROCEDURE sp_DeleteUser
(
@UserId int
)
AS
BEGIN
-- ユーザーが存在するかどうかを確認する
IF NOT EXISTS (SELECT 1 FROM Users WHERE UserId = @UserId)
BEGIN
RAISERROR('ユーザー ID "%d" のユーザーは存在しません。', 18, 1, @UserId);
RETURN;
END
-- ユーザーを削除する
DELETE FROM Users WHERE UserId = @UserId;
-- 成功メッセージを返す
RAISERROR('ユーザー ID "%d" のユーザーが削除されました。', 11, 1, @UserId);
END;
ユーザー ID "1" のユーザーが削除されました。
例 3: 置換パラメーターを使用してエラー メッセージを生成する
CREATE PROCEDURE sp_UpdatePassword
(
@UserId int,
@NewPassword nvarchar(50)
)
AS
BEGIN
-- パスワードが 6 文字未満の場合は、エラーを報告する
IF LEN(@NewPassword) < 6
BEGIN
RAISERROR('パスワードは 6 文字以上である必要があります。', 18, 1, @NewPassword);
RETURN;
END
-- パスワードを更新する
UPDATE Users
SET Password = @NewPassword
WHERE UserId = @UserId;
-- 成功メッセージを返す
RAISERROR('ユーザー ID "%d" のパスワードが更新されました。', 11, 1, @UserId);
END;
ユーザー ID "1" のパスワードが更新されました。
RAISERROR() の代替方法
THROW
THROW は、Transact-SQL で例外をスローするために使用されるステートメントです。RAISERROR() に比べて以下の利点があります。
- 簡潔: THROW は RAISERROR() よりも簡潔で、コードを読みやすくすることができます。
- エラー処理ロジックの明確化: THROW は、エラー処理ロジックをより明確にすることができます。
- .NET Framework との互換性: THROW は .NET Framework と互換性があり、.NET Framework を使用するアプリケーションとの統合が容易になります。
ただし、THROW には RAISERROR() と比べて以下の欠点もあります。
- トランザクションのロールバック: THROW は常にトランザクションをロールバックする一方、RAISERROR() は
severity
パラメーターの値に応じてトランザクションをロールバックするかどうかを決定することができます。 - CATCH ブロック: THROW でスローされた例外は、CATCH ブロックで処理できるとは限りません。一方、RAISERROR() で生成されたエラーは、CATCH ブロックで処理できます。
例:
CREATE PROCEDURE sp_CreateUser
(
@UserName nvarchar(50),
@Password nvarchar(50)
)
AS
BEGIN
DECLARE @UserId int;
-- ユーザーを作成する
INSERT INTO Users (UserName, Password)
VALUES (@UserName, @Password);
-- ユーザー ID を取得する
SELECT @UserId = SCOPE_IDENTITY();
-- ユーザー ID が 0 の場合は、例外をスローする
IF @UserId = 0
BEGIN
THROW 5000, 16, 1, 'ユーザーの作成に失敗しました。';
END
-- 成功メッセージを返す
RAISERROR('ユーザー "%s" が作成されました。', 11, 1, @UserName);
END;
SIGNALER
SIGNER は、Transact-SQL でシグナルを発生させるために使用されるステートメントです。THROW に似ていますが、以下の点が異なります。
- シグナルの種類: SIGNALER は、事前定義されたシグナルの種類を指定する必要があります。一方、THROW は、任意のエラー メッセージを指定することができます。
- エラー処理ロジック: SIGNALER は、エラー処理ロジックをより詳細に制御することができます。
SIGNER は、複雑なエラー処理ロジックが必要な場合に役立ちます。ただし、THROW に比べて複雑で、習得するのが難しいという欠点があります。
CREATE PROCEDURE sp_CreateUser
(
@UserName nvarchar(50),
@Password nvarchar(50)
)
AS
BEGIN
DECLARE @UserId int;
-- ユーザーを作成する
INSERT INTO Users (UserName, Password)
VALUES (@UserName, @Password);
-- ユーザー ID を取得する
SELECT @UserId = SCOPE_IDENTITY();
-- ユーザー ID が 0 の場合は、シグナルを発生させる
IF @UserId = 0
BEGIN
SIGNALEVENT('CreateUserFailed');
END
-- 成功メッセージを返す
RAISERROR('ユーザー "%s" が作成されました。', 11, 1, @UserName);
END;
BEGIN...CATCH...END ブロック
BEGIN...CATCH...END ブロックは、Transact-SQL でエラーを処理するために使用される構文です。RAISERROR() や THROW を使用するよりも、より構造化された方法でエラーを処理することができます。
BEGIN...CATCH...END ブロックは、複数の CATCH ブロックを含めることができ、それぞれ異なる種類のエラーを処理することができます。また、FINALLY ブロックを使用して、エラーが発生したかどうかにかかわらず、常に実行されるコードを記述することもできます。
BEGIN...CATCH...END ブロックは、複雑なエラー処理ロジックが必要な場合に役立ちます。ただし、THROW や SIGNALER に比べて冗長で、コードを読みづらくする可能性があります。
CREATE PROCEDURE sp_CreateUser
(
@UserName nvarchar(50),
@Password nvarchar(50)
)
AS
BEGIN
DECLARE @UserId int;
-- ユーザーを作成する
BEGIN TRANSACTION;
INSERT INTO Users (UserName, Password)
VALUES (@UserName, @Password);
-- ユーザー ID を取得する
SELECT @UserId = SCOPE_IDENTITY();
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