二段階コミット:ラストセカンド障害を防ぐための安全なトランザクション処理
二段階コミットがラストセカンド障害を防ぐ仕組み
二段階コミットとは?
二段階コミットは、複数のデータベースにまたがるトランザクションを安全にコミットするための手法です。二つの段階に分けて処理を行うことで、データの整合性と原子性を保証します。
準備フェーズ
- 各参加ノードは、トランザクションに必要な変更をローカルに記録し、コミットの準備を整えます。
- まだデータの変更は実際にはコミットされません。
コミットフェーズ
- コーディネータと呼ばれるノードが、すべての参加ノードにコミットを指示します。
- 各参加ノードは、指示に従ってローカルの変更をコミットし、完了をコーディネータに報告します。
- コーディネータは、すべての参加ノードから完了報告を受け取ったら、トランザクションの完了を宣言します。
ラストセカンド障害とは?
二段階コミットのコミットフェーズにおいて、コーディネータや参加ノードに障害が発生した場合、トランザクションが不完全な状態になることがあります。これがラストセカンド障害です。
- コーディネータが障害で応答不能になった場合、参加ノードはコミットを完了できず、トランザクションが宙ぶらりん状態になります。
- 参加ノードが障害でコミット処理を完了できなかった場合、データの整合性が失われる可能性があります。
二段階コミットによるラストセカンド障害の防止
二段階コミットは、以下の仕組みによってラストセカンド障害を防ぎます。
- コミット前ログ: 各参加ノードは、コミット前にローカルの変更をログに記録します。障害発生後、ログ情報に基づいてトランザクションを復元できます。
- 投票: コーディネータは、コミットフェーズに入る前に参加ノードに投票を依頼します。過半数のノードから投票を得られた場合のみコミットを実行します。
- タイムアウト: コーディネータは、参加ノードからの応答を一定時間待機します。タイムアウトが発生した場合は、障害発生と判断し、トランザクションをロールバックします。
これらの仕組みによって、たとえラストセカンド障害が発生しても、データの整合性を保ち、トランザクションを安全に処理することができます。
import psycopg2
# データベース接続情報
DB_HOST = "localhost"
DB_PORT = 5432
DB_USER = "postgres"
DB_PASSWORD = "password"
DB_DATABASE = "test"
# 参加ノード情報
NODE1 = "node1"
NODE2 = "node2"
# コーディネータノード
def coordinator(node1, node2):
# 準備フェーズ
prepare_txn(node1)
prepare_txn(node2)
# コミットフェーズ
if vote(node1, node2):
commit_txn(node1)
commit_txn(node2)
else:
abort_txn(node1)
abort_txn(node2)
# 参加ノード
def prepare_txn(node):
# 接続
conn = psycopg2.connect(
host=DB_HOST,
port=DB_PORT,
user=DB_USER,
password=DB_PASSWORD,
database=DB_DATABASE,
)
cursor = conn.cursor()
# トランザクション開始
cursor.execute("BEGIN")
# 処理(例:データ更新)
# ...
# ログ記録
# ...
# コミット準備完了
cursor.execute("PREPARE TRANSACTION 'my_txn'")
# 接続切断
cursor.close()
conn.close()
def commit_txn(node):
# 接続
conn = psycopg2.connect(
host=DB_HOST,
port=DB_PORT,
user=DB_USER,
password=DB_PASSWORD,
database=DB_DATABASE,
)
cursor = conn.cursor()
# コミット
cursor.execute("COMMIT TRANSACTION 'my_txn'")
# 接続切断
cursor.close()
conn.close()
def abort_txn(node):
# 接続
conn = psycopg2.connect(
host=DB_HOST,
port=DB_PORT,
user=DB_USER,
password=DB_PASSWORD,
database=DB_DATABASE,
)
cursor = conn.cursor()
# ロールバック
cursor.execute("ROLLBACK TRANSACTION 'my_txn'")
# 接続切断
cursor.close()
conn.close()
def vote(node1, node2):
# 投票ロジック
# ...
return True
# 実行
coordinator(NODE1, NODE2)
このコードはあくまでサンプルであり、実際の運用には適宜修正が必要です。
動作例:
- コーディネータノードは、
prepare_txn
関数を呼び出して参加ノードに準備フェーズを開始させます。 - 参加ノードは、データベースへの接続、トランザクション開始、処理、ログ記録、コミット準備完了などの処理を行います。
- コーディネータノードは、
vote
関数を呼び出して参加ノードの投票を集計します。 - 過半数のノードから投票を得られた場合、コーディネータノードは
commit_txn
関数を呼び出して参加ノードにコミットを指示します。 - 参加ノードは、データベースへの接続、コミット処理を行い、接続を切断します。
- 投票結果が過半数に満たない場合、コーディネータノードは
abort_txn
関数を呼び出して参加ノードにロールバックを指示します。
二段階コミットに、障害発生時の復旧処理を強化した方法です。準備フェーズ、コミットフェーズ、ロールバックフェーズの三つの段階に分けて処理を行います。
一意制約
データベースに一意制約を設定することで、データの重複や矛盾を防ぎ、ラストセカンド障害によるデータ損失を防ぐことができます。
競合解決
複数のノードが同時に同じデータにアクセスしようとする場合、競合が発生する可能性があります。競合解決メカニズムを導入することで、データの整合性を保ち、ラストセカンド障害を防ぐことができます。
分散ロック
データへのアクセスを制御することで、ラストセカンド障害によるデータの不整合を防ぐことができます。
ログベースレプリケーション
すべての変更をログに記録し、それを複製することで、障害発生時にデータの復元が可能になります。
database distributed-transactions