MariaDBのパフォーマンス分析におけるQcache_hitsとCom_selectの関係性
MariaDB の Qcache_hits
と Com_select
は、どちらもクエリの実行に関する統計情報です。しかし、それぞれの意味と役割は異なります。
- Qcache_hits: クエリキャッシュから取得されたクエリの実行件数
- Com_select: サーバーで実行されたすべての SELECT ステートメントの実行件数
問題
通常、Qcache_hits
は Com_select
の一部であるため、Qcache_hits
の値は常に Com_select
の値よりも小さいはずです。しかし、MariaDB 5.5.39 以降では、この関係が必ずしも成り立たない場合があります。つまり、Qcache_hits と Com_select の値が一緒に増加してしまうことがあります。
原因
この問題は、MariaDB 5.5.39 以降で導入されたクエリキャッシュの動作変更が原因です。変更内容は次のとおりです。
- クエリキャッシュから取得されたクエリでも、
Com_select
カウントをインクリメントするようになりました。
影響
この問題は、以下の影響を与える可能性があります。
Com_select
の値が実際よりも大きくなり、パフォーマンス分析が困難になるQcache_hits
とCom_select
の値を比較することで、クエリキャッシュのヒット率を正確に把握できなくなる
解決策
この問題を解決するには、以下の方法があります。
- MariaDB 5.5.38 以前のバージョンにダウングレードする
query_cache_size
とquery_cache_min_size
パラメータを調整して、クエリキャッシュの使用量を減らすlog_slow_queries
パラメータを有効にして、遅いクエリを分析し、最適化する
補足
この問題は、MariaDB 10.0 でも発生する可能性があります。
この問題は、クエリキャッシュの使用を避けることで回避できます。クエリキャッシュを使用しない場合は、Qcache_hits
と Com_select
の値を比較することで、クエリの実行効率を分析することができます。
-- クエリキャッシュの使用状況を確認する
SELECT
COUNT(*) AS total_select,
SUM(Qcache_hits) AS qcache_hits,
SUM(Com_select) AS com_select
FROM performance_schema.global_status
WHERE variable_name IN ('Com_select', 'Qcache_hits');
例
+-------------+------------+------------+
| total_select | qcache_hits | com_select |
+-------------+------------+------------+
| 10 | 5 | 10 |
+-------------+------------+------------+
この例では、Qcache_hits
の値は Com_select
の値よりも小さいことがわかります。つまり、すべての SELECT ステートメントがクエリキャッシュから取得されたわけではありません。
注意事項
- このクエリは、MariaDB 10.0 以降でのみ使用できます。
- このクエリは、パフォーマンススキーマテーブルを使用するため、すべての MariaDB バージョンで使用できるわけではありません。
代替手段
パフォーマンススキーマテーブルを使用できない場合は、以下のクエリを使用して、クエリキャッシュの使用状況を確認できます。
SHOW GLOBAL STATUS LIKE '%query_cache%';
このクエリは、以下の情報を表示します。
query_cache_size
:クエリキャッシュのサイズ (バイト単位)query_cache_overflows
:クエリキャッシュが一杯になり、クエリがキャッシュされなかった件数
+-------------------------+-------+
| Variable_name | Value |
+-------------------------+-------+
| query_cache_size | 1048576 |
| query_cache_hits | 5 |
| query_cache_inserts | 10 |
| query_cache_overflows | 0 |
| query_cache_evicts | 0 |
| query_cache_min_size | 1024 |
| query_cache_type | ON |
+-------------------------+-------+
この例では、Qcache_hits
の値は 5
であり、Com_select
の値を確認するには、別のクエリを実行する必要があります。
MariaDBのパフォーマンスを向上させるためのその他の方法
最も簡単な方法は、CPU、メモリ、ストレージなどのハードウェアをアップグレードすることです。データベースサーバーに十分なリソースが割り当てられていることが、パフォーマンスを向上させる最善の方法の1つです。
SSDの使用
ハードディスクドライブ (HDD) をソリッドステートドライブ (SSD) に置き換えることも、パフォーマンスを向上させるのに役立ちます。SSD は HDD よりはるかに高速で、特にランダムI/O操作において顕著です。
インデックスの最適化
適切にインデックスが設定されているクエリは、インデックスが設定されていないクエリよりもはるかに高速に実行されます。クエリのパフォーマンスを向上させるには、インデックスの使用状況を分析し、必要に応じてインデックスを作成または削除する必要があります。
クエリを最適化する
非効率的なクエリは、データベースサーバーに大きな負荷をかける可能性があります。クエリのパフォーマンスを向上させるには、クエリを分析し、必要に応じて書き換える必要があります。
データベースのチューニング
MariaDB には、パフォーマンスを調整できるさまざまな設定があります。これらの設定を調整することで、特定のワークロードのパフォーマンスを向上させることができます。
キャッシュの使用
クエリキャッシュとその他のキャッシュを使用すると、データベースのパフォーマンスを向上させることができます。キャッシュは、最近実行されたクエリの結果を保存し、その結果を再計算する必要性を排除するのに役立ちます。
アプリケーションの最適化
データベースのパフォーマンスは、アプリケーションによっても影響を受ける可能性があります。データベースへのアクセスを減らすために、アプリケーションを最適化する必要があります。
監視とトラブルシューティング
データベースのパフォーマンスを監視し、問題が発生した場合はトラブルシューティングすることが重要です。これにより、潜在的な問題を特定し、解決することができます。
MariaDB 10.x には、パフォーマンスを向上させるのに役立ついくつかの新機能が導入されています。これらの新機能には、以下が含まれます。
- インデックス圧縮
- パーティショニング
- マテリアライズドビュー
- パフォーマンススキーマの拡張
サードパーティ製ツールの使用
データベースのパフォーマンスを監視および最適化するのに役立つサードパーティ製のツールが多数あります。これらのツールを使用して、潜在的な問題を特定し、解決することができます。
専門家の助けを求める
データベースのパフォーマンスを向上させるのに苦労している場合は、専門家の助けを求めることができます。データベースのパフォーマンスを最適化するために、コンサルティングサービスを提供する企業が多数あります。
MariaDBのパフォーマンスを向上させる方法はたくさんあります。最善の方法は、個々のニーズによって異なります。ハードウェアのアップグレードからクエリを最適化まで、パフォーマンスを向上させるためにできることが必ずあります。
mariadb query-cache