MySQL 8.0の新機能「WITH句」を使いこなそう! サンプルコード付き

2024-06-16

MySQLにおけるWITH句の使用方法:詳細ガイド

概要

WITH句の基本的な構文は以下の通りです。

WITH cte_name (column1, column2, ...) AS (
  SELECT ...
  FROM ...
  WHERE ...
  GROUP BY ...
  HAVING ...
  ORDER BY ...
)

SELECT * FROM cte_name;
  1. cte_name: CTEに付ける名前(エイリアス)
  2. column1, column2...: CTEの列名
  3. SELECT ...: CTEの定義に含めるSELECTクエリ
  4. FROM ...: CTEのデータソースとなるテーブル
  5. WHERE ...: CTEのデータ行を絞り込む条件
  6. GROUP BY ...: CTEの行をグループ化するための列
  7. HAVING ...: グループ化結果に対して条件を指定

補足

  • cte_nameは、英字、数字、アンダースコア(_)のみ使用可能です。
  • 列名のリストとSELECT句の列名は一致する必要があります。
  • サブクエリだけでなく、UNION、INTERSECT、EXCEPTなどの結合操作もCTE内に記述できます。
  • CTEを再帰的に呼び出すことも可能です(WITH RECURSIVEキーワードを使用)。
  • 可読性の向上: 複雑なクエリを複数のCTEに分割することで、コードの構造を明確化し、理解しやすくなります。
  • メンテナンス性の向上: CTEを再利用することで、重複コードを削減し、メンテナンス性を向上させることができます。
  • パフォーマンスの向上: CTEを適切に活用することで、サブクエリの実行回数を減らし、クエリのパフォーマンスを向上させることができます。

WITH句の例

以下に、WITH句の具体的な使用例をいくつか紹介します。

例1:顧客の注文履歴と合計金額の取得

この例では、顧客ID、注文日、注文内容、合計金額を抽出するCTEを作成し、その結果セットを使用して顧客情報を表示します。

WITH customer_orders AS (
  SELECT customer_id, order_date, product_name, quantity, price,
         quantity * price AS total_amount
  FROM orders
  JOIN products ON products.product_id = orders.product_id
)

SELECT customer_id, order_date, total_amount
FROM customer_orders;

例2:階層データの再帰処理

この例では、階層構造を持つデータ(例えば、組織図など)を再帰的に処理するCTEを作成します。

WITH RECURSIVE organization_tree AS (
  SELECT employee_id, name, manager_id
  FROM employees
  WHERE manager_id IS NULL

  UNION ALL

  SELECT e.employee_id, e.name, e.manager_id
  FROM employees AS e
  JOIN organization_tree AS t ON t.employee_id = e.manager_id
)

SELECT * FROM organization_tree;

例3:期間ごとの売上分析

この例では、指定された期間における売上データを日ごと、週ごと、月ごとに集計するCTEを作成します。

WITH sales_data AS (
  SELECT order_date, SUM(quantity * price) AS total_sales
  FROM orders
  JOIN products ON products.product_id = orders.product_id
  WHERE order_date BETWEEN '2023-01-01' AND '2023-12-31'
  GROUP BY DATE(order_date)
)

SELECT
  date_format(order_date, '%Y-%m-%d') AS order_day,
  total_sales
FROM sales_data
UNION ALL
SELECT
  date_format(order_date, '%Y-%m') AS order_week,
  SUM(total_sales) AS total_sales
FROM sales_data
GROUP BY WEEK(order_date)
UNION ALL
SELECT
  date_format(order_date, '%Y-%m') AS order_month,
  SUM(total_sales) AS total_sales
FROM sales_data
GROUP BY MONTH(order_date);



サンプルコード:WITH句の応用例

この例では、顧客ごとの注文履歴と合計金額を算出するWITH句を使用します。

WITH customer_orders AS (
  SELECT customer_id, order_date, product_name, quantity, price,
         quantity * price AS total_amount
  FROM orders
  JOIN products ON products.product_id = orders.product_id
)

SELECT customer_id, order_date, product_name, quantity, price, total_amount
FROM customer_orders
ORDER BY customer_id, order_date;

巣状構造データの階層表示

この例では、従業員情報テーブルをもとに、従業員とその上司の関係を階層的に表示するWITH句を使用します。

WITH recursive employee_hierarchy AS (
  SELECT employee_id, name, manager_id
  FROM employees
  WHERE manager_id IS NULL

  UNION ALL

  SELECT e.employee_id, e.name, e.manager_id
  FROM employees AS e
  JOIN employee_hierarchy AS h ON h.employee_id = e.manager_id
)

SELECT *
FROM employee_hierarchy
ORDER BY employee_id;

商品カテゴリごとの売上分析(期間別・売上順)

この例では、期間中に各商品カテゴリで発生した売上を分析し、売上順に表示するWITH句を使用します。

WITH sales_data AS (
  SELECT p.category_id, category_name, order_date, SUM(quantity * price) AS total_sales
  FROM orders AS o
  JOIN products AS p ON p.product_id = o.product_id
  WHERE order_date BETWEEN '2024-01-01' AND '2024-06-15'
  GROUP BY p.category_id, category_name, DATE(order_date)
)

SELECT category_id, category_name, order_date, total_sales
FROM sales_data
ORDER BY category_id, order_date DESC, total_sales DESC;

説明

  • 上記の例では、それぞれのWITH句に名前(customer_ordersemployee_hierarchysales_dataなど)を付与しています。これは、複数のCTEを定義する場合や、同じCTEを複数回参照する場合に役立ちます。
  • 各CTE内部では、SELECT、FROM、WHEREなどの句を使って、必要なデータを取得するためのクエリを記述します。
  • 複数のCTEを組み合わせることで、複雑なデータ処理を論理的に分割し、理解しやすいコードを書くことができます。
  • WITH句は、MySQL 8.0以降で使用できます。



WITH句以外の代替方法

代替方法の例

サブクエリ

WITH句の代わりに、サブクエリを使用して共通結果セットを定義することができます。ただし、サブクエリはコードを冗長化し、可読性を低下させる可能性があります。

-- WITH句を使用した例
WITH customer_orders AS (
  SELECT ...
)

SELECT * FROM customer_orders;

-- サブクエリを使用した例
SELECT *
FROM (
  SELECT ...
) AS customer_orders;

JOIN

複数のテーブルを結合することで、複雑なデータ処理を行うことができます。ただし、JOINは複雑になりやすく、メンテナンスが困難になる場合があります。

-- WITH句を使用した例
WITH customer_orders AS (
  SELECT ...
)

SELECT ...
FROM customer_orders
JOIN ...;

-- JOINを使用した例
SELECT ...
FROM orders
JOIN products ON ...
JOIN customers ON ...;

仮想テーブル

一時的なテーブルを作成することで、共通結果セットを保持することができます。ただし、仮想テーブルはデータベースの容量を圧迫する可能性があります。

-- WITH句を使用した例
WITH customer_orders AS (
  SELECT ...
)

SELECT * FROM customer_orders;

-- 仮想テーブルを使用した例
CREATE TEMPORARY TABLE customer_orders (
  ...
);

INSERT INTO customer_orders ...;

SELECT * FROM customer_orders;

DROP TEMPORARY TABLE customer_orders;

適切な方法の選択

どの方法が最適かは、具体的な状況によって異なります。以下の点を考慮して選択してください。

  • クエリ複雑性: WITH句は、複雑なクエリを簡潔に記述するのに適しています。
  • 可読性: WITH句は、コードを明確に構造化し、可読性を向上させることができます。
  • パフォーマンス: サブクエリやJOINは、WITH句よりもパフォーマンスが劣る場合があります。

WITH句は、強力なツールですが、万能ではありません。状況に応じて適切な方法を選択することで、効率的で分かりやすいクエリを記述することができます。


mysql common-table-expression with-clause


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