パフォーマンスと整合性のジレンマを解決:MariaDB分離レベルの適切な設定方法
MariaDBにおけるトランザクション分離レベルの詳細解説
MariaDBは、オープンソースのRDBMSであり、MySQLと高い互換性を持ちながら、機能や性能が向上しています。トランザクション分離レベルは、データベース操作の同時実行における整合性を制御する重要な概念です。この記事では、MariaDBにおけるトランザクション分離レベルについて、詳細かつ分かりやすく解説します。
目次
- トランザクション分離レベルとは?
- MariaDBがサポートする分離レベル
- 各分離レベルの特徴と詳細 3.1 READ UNCOMMITTED 3.2 READ COMMITTED 3.3 REPEATABLE READ 3.4 SERIALIZABLE
- 適切な分離レベルの選択
トランザクション分離レベルは、複数のトランザクションがデータベースを同時に操作する場合に、どのようなレベルで相互作用を許容するかを決定します。具体的には、以下の3つの現象を制御します。
- ダーティリード: 未コミットのトランザクションの変更結果を読み込むこと
- ファジーリード/ノンリピータブルリード: 同じトランザクション内で、2回読み取った際にデータが異なること
- ファントムリード: 読み込みトランザクション開始後に別のトランザクションによって挿入されたデータを読み込むこと
これらの現象をどの程度許容するかが、トランザクション分離レベルによって決められます。分離レベルが高いほど、データの整合性は保たれますが、ロックによる競合が発生しやすくなり、パフォーマンスが低下する可能性があります。
MariaDBは、以下の4つのトランザクション分離レベルをサポートしています。
- READ UNCOMMITTED
- REPEATABLE READ
- SERIALIZABLE
それぞれのレベルについて、詳細を以下で説明します。
各分離レベルの特徴と詳細
- 特徴:
- 読み取り操作において、コミットされていない変更も含めて読み込む可能性がある
- ダーティリード、ファジーリード、ファントムリードが発生する可能性が高い
- 最も低い分離レベルであり、パフォーマンスが最も高い
- 詳細:
- 特徴:
- コミットされた変更のみを読み込む
- READ UNCOMMITTEDよりも整合性が高く、パフォーマンスも比較的良好
- 詳細:
- 読み取り操作が比較的多いWebアプリケーションなどに適している
- ある程度の整合性を保ちつつ、パフォーマンスも考慮したい場合に選択する
- 特徴:
- トランザクション開始時点のデータスナップショットを読み込む
- 読み込み操作中に他のトランザクションによってデータが変更されても、影響を受けない
- 3つの分離レベルの中で最もバランスが取れている
- 詳細:
- 読み取り操作と書き込み操作が混在するようなアプリケーションに適している
- データの整合性を重視しつつ、ある程度の書き込み操作も許容したい場合に選択する
- 特徴:
- すべてのトランザクションがシリアル実行されるように見える
- 最も高い分離レベルであり、データ整合性が最も厳密に保たれる
- ロックによる競合が発生しやすいため、パフォーマンスが最も低下する
- 詳細:
- 銀行取引などの金融システムなど、極めて高いデータ整合性が求められる場合に適している
- パフォーマンスよりもデータ整合性を最優先に考える場合に選択する
適切な分離レベルは、アプリケーションの要件によって異なります。以下の点を考慮して選択する必要があります。
- データ整合性の重要度: データ整合性が極めて重要であれば、SERIALIZABLEを選択する必要があります。
- 読み取り操作と書き込み操作の割合: 読み取り操作が多い場合は、READ COMMITTEDまたはREPEATABLE READを選択すると良いでしょう。
- パフォーマンス: パフォーマンスが重要な場合は、READ UNCOMMITTEDまたはREAD COMMITTEDを選択する必要があります。
- アプリケーションの種類: 開
-- 各分離レベルの設定方法
-- セッションレベルで分離レベルを設定
SET SESSION TRANSACTION ISOLATION LEVEL READ UNCOMMITTED;
SET SESSION TRANSACTION ISOLATION LEVEL READ COMMITTED;
SET SESSION TRANSACTION ISOLATION LEVEL REPEATABLE READ;
SET SESSION TRANSACTION ISOLATION LEVEL SERIALIZABLE;
-- グローバルレベルで分離レベルを設定
SET GLOBAL TRANSACTION ISOLATION LEVEL READ UNCOMMITTED;
SET GLOBAL TRANSACTION ISOLATION LEVEL READ COMMITTED;
SET GLOBAL TRANSACTION ISOLATION LEVEL REPEATABLE READ;
SET GLOBAL TRANSACTION ISOLATION LEVEL SERIALIZABLE;
-- 各分離レベルにおける現象の確認
-- READ UNCOMMITTED
START TRANSACTION;
-- 未コミットのINSERTを実行
INSERT INTO users (name, age) VALUES ('Alice', 30);
-- コミットせずにSELECTを実行
SELECT * FROM users;
ROLLBACK;
-- READ COMMITTED
START TRANSACTION;
-- コミット済みのINSERTを実行
INSERT INTO users (name, age) VALUES ('Bob', 25);
COMMIT;
START TRANSACTION;
-- コミット済みのデータを参照
SELECT * FROM users;
-- REPEATABLE READ
START TRANSACTION;
-- 複数回SELECTを実行
SELECT * FROM users;
-- 別のトランザクションでUPDATEを実行
UPDATE users SET age = 32 WHERE name = 'Alice';
SELECT * FROM users;
-- SERIALIZABLE
START TRANSACTION;
-- 他のトランザクションのロックの影響を受けずにSELECTを実行
SELECT * FROM users;
- 上記のコードは、MySQL 8.0以降で動作確認済みです。
START TRANSACTION
とCOMMIT
またはROLLBACK
を組み合わせることで、トランザクションブロックを定義できます。- 各分離レベルにおける具体的な動作は、データベースの設定やデータの状態によって異なる場合があります。
MariaDBにおけるトランザクション分離レベルの詳細解説:補足
以下のコマンドを使用して、現在のセッションおよびグローバルレベルでの分離レベルを確認できます。
-- セッションレベルの確認
SELECT @@session.transaction_isolation;
-- グローバルレベルの確認
SELECT @@global.transaction_isolation;
分離レベルの変更
-- セッションレベルの変更
SET SESSION TRANSACTION ISOLATION LEVEL READ UNCOMMITTED;
-- グローバルレベルの変更
SET GLOBAL TRANSACTION ISOLATION LEVEL SERIALIZABLE;
注意事項
- 分離レベルを変更すると、既存のトランザクションに影響を与える可能性があります。
- グローバルレベルの分離レベルを変更するには、スーパーユーザー権限が必要です。
MariaDBのトランザクション分離レベルに関する詳細情報は、以下の公式ドキュメントを参照してください。
- 本記事では、MariaDBにおけるトランザクション分離レベルについて基本的な内容を説明しました。
- より高度な使用方法や、具体的なパフォーマンスへの影響などについては、専門書籍や資料を参照することをお勧めします。
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