データベース設計:関数依存関係から主キーを決定する方法
データベースにおける関数依存関係から主キーを決定する方法
主キーは、データベース内のレコードを一意に識別するために使用される属性の集合です。関数依存関係を分析することで、適切な主キーを導き出すことができます。
関数依存関係には、以下の種類があります。
- 単一属性決定: 決定属性が1つの属性である場合。
- 推移的決定: ある属性が別の属性を決定し、その別の属性がさらに別の属性を決定する場合。
主キーの決定
関数依存関係から主キーを決定するには、以下の手順に従います。
- すべての関数依存関係を特定する: 各属性ペアについて、その属性ペアが関数依存関係を形成しているかどうかを分析します。
- 候補キーを特定する: 決定属性が主キー候補となります。
- 最小候補キーを選択する: 最も少ない属性で構成される主キー候補を選択します。
例
次のテーブルを例として考えてみましょう。
顧客ID | 氏名 | 住所 | 電話番号 |
---|---|---|---|
C001 | 田中一郎 | 東京都渋谷区 | 03-1234-5678 |
C002 | 佐藤二郎 | 大阪府大阪市 | 06-8765-4321 |
C003 | 高橋三郎 | 福岡県福岡市 | 092-9876-5432 |
このテーブルには、以下の関数依存関係が存在します。
- 顧客ID -> 氏名、住所、電話番号
- 住所 -> 電話番号
上記の関数依存関係から、以下の候補キーが特定できます。
- 顧客ID
- 住所
最小候補キーは、顧客IDです。なぜなら、住所は顧客IDによって決定されるため、住所を主キーに選ぶと冗長なデータが発生するからです。
関数依存関係は、データベース設計において重要な概念です。関数依存関係を分析することで、適切な主キーを導き出し、データの整合性を保つことができます。
補足
- 関数依存関係は、非冗長性と更新異常を防ぐために重要です。
- 主キー以外にも、外部キーや代替キーなどのキーの種類があります。
- データベース設計においては、関数依存関係以外にも、正規化などの手法を用いて、効率的で整合性の高いデータベースを設計することが重要です。
サンプルコード:関数依存関係から主キーを決定する
Pythonによるサンプルコード
def find_primary_key(relations, functional_dependencies):
"""
関数依存関係から主キーを決定する関数
Args:
relations: 関係スキーマ
functional_dependencies: 関数依存関係
Returns:
主キーのリスト
"""
candidate_keys = []
for relation in relations:
attributes = set(relation.keys())
# 候補キーを特定する
for determinant in functional_dependencies:
if determinant.issubset(attributes):
candidate_keys.append(determinant)
# 最小候補キーを選択する
minimal_candidate_keys = []
for candidate_key in candidate_keys:
if not any(candidate_key.issuperset(other) for other in candidate_keys):
minimal_candidate_keys.append(candidate_key)
primary_key = minimal_candidate_keys[0] if minimal_candidate_keys else None
yield relation, primary_key
relations = {
'customers': {'customer_id': 'int', 'name': 'string', 'address': 'string', 'phone_number': 'string'},
'orders': {'order_id': 'int', 'customer_id': 'int', 'product_id': 'int', 'quantity': 'int'},
'products': {'product_id': 'int', 'name': 'string', 'price': 'float'},
}
functional_dependencies = {
('customer_id',): ('name', 'address', 'phone_number'),
('address',): ('phone_number',),
('customer_id', 'product_id'): ('order_id',),
('product_id',): ('name', 'price'),
}
for relation, primary_key in find_primary_key(relations, functional_dependencies):
print(f"関係: {relation}")
print(f"主キー: {primary_key}")
find_primary_key
関数を受け取り、関係スキーマと関数依存関係を渡します。- 関数は、各関係について以下の処理を行います。
- 関係内の属性の集合を計算します。
- 候補キーを特定するために、すべての関数依存関係をループします。
- 最小候補キーを選択するために、候補キーをループします。
- 関数は、関係と主キーのペアを生成します。
- メインプログラムでは、
find_primary_key
関数を実行し、結果を出力します。
説明
relations
変数には、関係スキーマが辞書形式で格納されています。キーは関係名、値は属性名とデータ型を表す辞書です。functional_dependencies
変数には、関数依存関係が集合形式で格納されています。各要素は、決定属性の集合を表すタプルです。- 関数は、各関係について以下の処理を行います。
attributes
変数には、関係内の属性の集合が格納されます。candidate_keys
リストには、候補キーが格納されます。
- このコードはあくまで例であり、実際のデータベース設計では、より複雑なロジックが必要となる場合があります。
- 関数依存関係の分析には、さまざまなアルゴリズムがあります。
- データベース設計ツールの中には、関数依存関係から主キーを自動的に導き出す機能を備えているものがあります。
関数依存関係から主キーを決定するその他の方法
閉包を用いた方法
- 各決定属性の閉包を求めます。
- すべての属性を含む閉包が1つだけの場合、その閉包が主キーとなります。
例
上記の例で、各決定属性の閉包を求めると、以下のようになります。
- customer_id: customer_id, name, address, phone_number
- address: address, phone_number
- product_id: product_id, name, price
すべての属性を含む閉包は、customer_idとcustomer_id, product_idの2つです。このうち、最小の閉包はcustomer_idであるため、これが主キーとなります。
表形式を用いた方法
- 関係スキーマを表形式で表します。
- 各属性の列に、その属性を決定する属性を書き込みます。
- 主キーは、決定属性として他の属性を書き込まれない列となります。
上記の例を表形式で表すと、以下のようになります。
属性 | 決定属性 |
---|---|
customer_id | |
name | customer_id |
address | customer_id |
phone_number | customer_id, address |
order_id | customer_id, product_id |
product_id | |
name | product_id |
price | product_id |
主キーは、決定属性として他の属性を書き込まれないcustomer_idとproduct_idの列となります。
商用ツールを用いた方法
データベース設計ツールの中には、関数依存関係から主キーを自動的に導き出す機能を備えているものがあります。これらのツールを使用すると、手動で分析するよりも効率的に主キーを決定することができます。
上記以外にも、さまざまな方法があります。どの方法を使用するかは、データベースの複雑さや個々の要件によって異なります。
関数依存関係から主キーを決定することは、データベース設計において重要な作業です。上記で紹介した方法は、それぞれ異なる利点と欠点があります。状況に応じて適切な方法を選択することが重要です。
database functional-dependencies