ダーティリード、非反復読み取り、ファントムリード…もう怖くない!シリアル化分離レベルでSQL Serverのデータを守る
SQL Serverにおけるシリアル化可能分離レベル:詳細解説と使用すべき状況
- ダーティリード: コミットされていないトランザクションによって書き込まれたデータを読み込むこと
- 非反復読み取り: 同じデータを2回読み取った際に、1回目の読み取り以降に別のトランザクションによってデータが変更されていること
- ファントムリード: 特定の条件で検索を実行した際に、条件を満たす行のセットが別のトランザクションによって変更されていること
- コミットアノマリ: 複数のトランザクションを順不同に実行した場合と、まったく同じ結果にならないこと
シリアル化可能分離レベルを使用する主な利点は以下の通りです。
- 高いデータ整合性: 上記で説明した問題が発生せず、常に整合したデータを読み取ることができます。
- 予測可能性: トランザクションの実行結果は、常に他のトランザクションの影響を受けずに、あたかも単独で実行されたかのように確定します。
- パフォーマンスへの影響: ロックメカニズムを多用するため、他の分離レベルと比べてパフォーマンスが低下する可能性があります。
- デッドロックの発生可能性: 複数のトランザクションが互いにロックを待機し合うデッドロックが発生しやすくなります。
- 複雑性: アプリケーションロジックが複雑になり、デバッグが困難になる可能性があります。
- 金融機関や医療機関など、データ整合性が極めて重要なアプリケーション
- 複数のユーザーが同じデータを同時に更新する可能性が高く、データ競合が発生する可能性がある場合
- トランザクションの実行結果が常に予測可能であることが求められる場合
シリアル化可能分離レベルを使用する前には、以下の点に注意する必要があります。
- パフォーマンスへの影響: アプリケーションのパフォーマンスに悪影響を及ぼさないことを確認する必要があります。
- デッドロックの可能性: デッドロックが発生する可能性を考慮し、適切な対策を講じる必要があります。
SQL Server でシリアル化可能分離レベルを設定するサンプルコード
SET TRANSACTION ISOLATION LEVEL SERIALIZABLE;
このコードを実行すると、現在のトランザクションはシリアル化可能分離レベルで実行されます。つまり、そのトランザクションは他のトランザクションの影響を受けずに、あたかも単独で実行されたかのように実行されます。
注意: このコードは、トランザクションを開始する前に実行する必要があります。トランザクションがすでに開始されている場合は、このコードを実行しても分離レベルは変更されません。
以下のコードは、BEGIN TRANSACTION
と COMMIT
を使用して、シリアル化可能分離レベルでトランザクションを実行する方法を示しています。
BEGIN TRANSACTION ISOLATION LEVEL SERIALIZABLE;
-- トランザクション内で実行するステートメント
COMMIT;
このコードを実行すると、BEGIN TRANSACTION
と COMMIT
の間に記述されたステートメントは、すべてシリアル化可能分離レベルで実行されます。
BEGIN TRANSACTION ISOLATION LEVEL SERIALIZABLE;
-- トランザクション内で実行するステートメント
SAVE TRANSACTION my_savepoint;
-- ここでエラーが発生した場合
ROLLBACK TRANSACTION my_savepoint;
-- または、正常に完了した場合
COMMIT;
このコードを実行すると、SAVE TRANSACTION my_savepoint
で指定された保存ポイントまで、トランザクションはシリアル化可能分離レベルで実行されます。その後、ROLLBACK TRANSACTION my_savepoint
を実行すると、トランザクションは保存ポイントの状態に戻されます。一方、COMMIT
を実行すると、トランザクションはコミットされ、変更内容が永続化されます。
これらのコード例はあくまでも基本的なものであり、実際のアプリケーションでは状況に応じて様々なバリエーションが考えられます。シリアル化可能分離レベルを使用する場合は、その特性を理解した上で、適切なロジックを記述する必要があります。
SQL Server でシリアル化可能分離レベルを設定するその他の方法
スクリプトパラメータを使用する
SQL Server Management Studio (SSMS) を使用して、スクリプトパラメータとして分離レベルを指定することができます。これにより、コードを毎回変更せずに、さまざまな分離レベルでスクリプトを実行することができます。
セッションレベルで設定する
sp_configure
プロシージャを使用して、セッションレベルの分離レベルを設定することができます。この設定は、そのセッションで実行されるすべてのトランザクションに適用されます。
それぞれの方法の詳細と利点・欠点は以下の通りです。
方法 | 詳細 | 利点 | 欠点 |
---|---|---|---|
トランザクション内で SET TRANSACTION ISOLATION LEVEL を使用する | 最も単純で柔軟性のある方法 | 特定のトランザクションのみ分離レベルを変更する必要がある場合に適している | コード内に分離レベル設定が含まれるため、可読性が低下する可能性がある |
BEGIN TRANSACTION と COMMIT を使用する | トランザクション全体をシリアル化可能分離レベルで実行する必要がある場合に適している | コードがわかりやすくなる | 保存ポイントを使用する場合、複雑になる可能性がある |
セッションレベルで sp_configure を使用する | 複数のトランザクションで同じ分離レベルを使用する必要がある場合に適している | 個々のトランザクションで分離レベルを変更できない | セッション内のすべてのトランザクションに影響を与えるため、注意が必要 |
アプリケーション接続レベルで接続文字列または ADO.NET 接続オブジェクトを使用する | アプリケーション全体で同じ分離レベルを使用する必要がある場合に適している | 個々のトランザクションで分離レベルを変更できない | アプリケーションコードが複雑になる可能性がある |
適切な方法を選択するには、以下の要素を考慮する必要があります。
- 必要な分離レベル: すべてのトランザクションに対してシリアル化可能分離レベルが必要かどうか、それとも特定のトランザクションのみが必要かどうか。
- コードの可読性: コード内に分離レベル設定を含めることで、可読性が低下するかどうか。
- トランザクションの複雑性: 保存ポイントを使用する必要があるかどうか。
- アプリケーションアーキテクチャ: セッションまたはアプリケーション接続レベルで分離レベルを設定することが、アプリケーションアーキテクチャに適合しているかどうか。
SQL Server でシリアル化可能分離レベルを設定するには、さまざまな方法があります。それぞれの方法には、利点と欠点があるため、要件と状況に応じて適切な方法を選択する必要があります。
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